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仕事が忙しくて,なかなかブログ更新ができていませんでした。
一応,いくつかの記事の下書きはちょっとずつ書き溜めてはいたのですが,全然完成させられてません……。
ちょうど仕事でバタバタしていた時期は,テレビのニュースは森友学園ばかりなりといった感じでしたが,その裏でひっそりとこれはアカンやろ? というようなことが起きていました。
近畿大の国語の入試問題で露骨な安倍政権批判を題材とした引用文が用いられた件です。
・近畿大で「反安倍」入試問題か 首相や政権の方針が批判的に登場…大学側「適正との結論」(zakzak)
今回はその点についてコメントしたいと思います。
なお,入試問題は著作権の観点で掲載できませんので悪しからず。
まあ,高校生あたりの人なら一部の予備校のサイトで会員登録することで入試問題を閲覧できるかもしれませんが……(あくまで予備校側が著作権の面をクリアしていればの話です)。
まず……
近大の国語の入試が露骨な「反安倍政権」の書籍を題材にして1大問を組んだのが発端です。受験生からも今年の1/29のTwitter上では様々な反応がすでにありました。
詳しくはTwitterで「近大 国語」で検索して,1/29辺りのツイートを見ていただければ良いかなと思います。
近大は,有名大ですからいろんな人が入試問題をチェックするわけですが,その中で葦牙予備校塾長の新家博先生がこれはやり過ぎなのではないかと画像付きで疑義を呈したことがきっかけでじわりじわりと広がったのかなとは思います(とはいえ,夕刊フジが記事にしてくるなんてまさかの事態でしたが……)。
どれだけ内心で腹が立っていても受験生は出題された問題を解けなきゃ合格できませんからね……。
今回のようなパターンは災難としか言いようがありません。
外部委員会のチェックは「入試実施後」
『外部委員会のチェックは「入試実施後」に行われた』という点です。
外部委員会のチェックは入試実施後~合格発表までというごく限られた時間でチェックを済まさなければなりません。
そういうことを押さえておくと,外部委員会がチェックできることはせいぜい次の話ぐらいなものでしょう。
- 受験生がちゃんと文章そのものを読解できて正答を導き出せる問題だったかどうか
- 解答不能の設問が無かったかどうか
そういう点で,近大サイドの発表における外部委員会の検証は,私からすれば「教官が政治的な意図が含めて意図的に出題したかどうか」については,そもそも検証すらやってないと思います。
なので,近大サイドの発表は論点をすり替えていると判断してよいのではないかなと思います。
だってねえ,試験実施後のチェックで引用文の題材選定そのものが駄目でしたなんて言えるわけがないですよ。
それやったらもっと前にチェックしとかんかい! とド正論のツッコミが入るでしょうし,受験生の試験・得点の扱いがどうなるんだなど冗談抜きに学内外に激震が走る事態を引き起こしますからね。
引用文そのものをチェックするなら原稿作成前の段階だ!
私も業界は違えど試験問題の作問には数年かかわってきています。自分の経験を基にして試験の作問について述べさせてもらいますが,基本的に試験作問の実務は次のように進む場合が多いと思います(出版社とかによっては一部の流れが異なるかもしれませんけど……)。
- 事前の打ち合わせ,仕様・出題範囲の策定→原稿作成→原稿整理→組版→校正→校了→印刷・折り・断裁
それ以降でチェックした場合にもしアウトになってしまったなら,実質的に原稿作成段階からのやり直しになってしまい,手間も費用も時間も浪費することになりますから。
近大は私学なので基本的に好きに題材を選ぶのもいいけど……
記事によれば「題材に政治的、宗教的な内容を取り扱わないというポリシーは特にない」とのことです。もちろん近大は私学ですから,基本的には入試委員会の教官の人の好きなように引用文の題材を選べばいいとは思います。
ただね,ものごとには何事にも限度があるわなと。
入試を作問するなら題材選定からちゃんと考えて作ってほしいものですね……。
国語や英語は長文の題材でどんな文章を引用・作成してくるかで作問者の方向性というかセンスがある程度は窺えます。今回のアレは選定した教官のセンスが悪いと言えばいいのか,品が無いと言えばいいのか……,コメントに困りますね。
教育基本法第14条第2項との兼ね合い的にどうなのか?
さて,色々書いてきましたが,zakzakの記事では重要な点が抜けているように思えてなりません。今回の引用文の題材選定は,教育基本法の第14条第2項との兼ね合いがどうなのか? という点です。
肝心の条文がどのようなものなのかということもありますので,条文を次に引用します。
法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。今回の問題の本質は,近大の国語を作問した入試委員会の教官が露骨なまでの安倍政権批判の引用文を自身の政治的な意図を込めて選定したのか否かという点だと私は思います(要は入試の場を借りた教官サイドの政治活動だったか否か)。
もちろん,教官サイドはそんな意図なんて表では絶対に認めやしないとは思いますが……。
レベル的にも入試問題としては成立しているのでしょうが……,他の文章でも受験生の実力を見ることは十分に可能だったはずですからねえ……。
それに,厄介なことは今年の受験生だけに影響する話ではないわけです。
入試問題は次の年以降の受験生は過去問集での実戦練習を通して実力を養っていくわけです。
近大は例年過去問集がしっかりと出されますから,著作権者の意向で過去問集に文章が掲載不可とならない限り,今回の文章が数年にわたって受験生にじわりじわりと影響を及ぼすなんて可能性も無視できないかもしれません。
最期に
長々と書いてきましたが,結論を書くと「入試問題としてはレベル的には問題なし。ただし,題材選定に対しては好ましからず。」といったところでしょうかね。自戒の意味も込めて,入試に限らずテスト問題を作問するときは題材の選定にも気を配らなければならないとは思います(レベルの考慮は言わずもがな)。
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