【2018年度入試】大阪府立高校入試・一般選抜社会科問題分析:その2(大問1について)

13:20:00
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前回は,一般選抜の全体的な傾向や分野別配点などを分析してきました。
今回からは,各大問についての分析を行いたいと思います。
気になった設問は,さらっと解説してみます。

前回に引き続き,今回も長くなるかもしれませんが,よろしくお付き合いください。

大問1について

大問1 農業
大問1は,「農業」をテーマにした分野融合問題でした。
世界地理,古代の歴史(日本史・世界史),経済,日本地理を融合させています。
レベル的にはおおよそ基礎~標準といったところですが,ちょっといやらしい設問があったり,日本文教出版の公民教科書を採択していた地域にとっては不利になるのでは? という疑念を生じさせる設問があったりした点は無視できません(これについては,後の節で詳述することとします)。

後は,ちょっと読図が面倒な(3)をいかに短時間で処理できたかどうかでしょう。

各小問についてのコメント

大問1は落としたくない設問が結構あります。
(1)は全問,(2)は①③(c)以外あたりはなるべく正解しておきたい設問になります。

(1)①はド定番レベルの統計資料の設問です。米・小麦の国別生産量割合の1・2位の国名の組み合わせの選択問題でした。中国・インドですね。

②はエジプト文明と密接な関係がある河川の選択問題。

③は日本の古代史に関する設問でした。(a) は文中のBの直前に銅鐸・銅鏡が記載されていますので,が残り,金属器という条件で須恵器(土器の一種)を除外してが正解となります。

(2)①は日本が属している気候帯と世界で2番目に広い気候帯を選択する完答問題でした。
ⓐは解ける人が多いところですが,問題は次のⓑです。
ここは解けなかった人が多かったと思います。
鍵となるのは,冷帯はロシアの多くなどのヨーロッパ北部,カナダの大半,アメリカ合衆国の一部という北アメリカ大陸の北側の多くが冷帯であることが思い浮かんだかどうかでしょう。面積的にロシア・カナダは世界有数の面積がある国ですから,そちらの知識と組み合わせてということになるでしょう。

別の見方をすれば,教科書に載っている気候分布の地図を頭に思い浮かべて解かないといけないというかなりいやらしい設問です。
これはしくじってもしょうがないでしょう。

②は基礎問題ですから,落としたくはありませんね。

③の(a)は需要・供給の関係です。曲線の移動は教科書によって書いてあるところ,書いてないところがありますが,原理がわかっていれば解ける設問です。
農作物が不作で供給量が減っても需要量が変わらない場合,買う側は値段が高くなっても買わざるを得ないのです。特に,昨年末~今年の途中までは野菜の不作がさんざん言われていましたから,ある意味,すごくタイムリーな出題となりました(多分,これは作問側の人も予測できていなかったかも?)。


(b)は間接税の説明で指定語句が2語ありますので,教科書レベルです。記述でもこれは落としたくはありません。

(c)は後の節で詳述しますが,私個人としてはこの設問はいただけません。教科書間で不利が生じた可能性があるかもしれません。

(3)はグラフ2種類の読図とそこから2文の正誤判別の設問でした。
Pは100万人以上の減少は正しいですが,耕地面積の減少の数値が誤りです。
Qは高齢者の就業人口減少は正しいですが,5ha以上の経営耕地面積は20万haも減少していません。5ha未満が減少しており,5ha以上についてはむしろ増加しています。

教科書間で有利・不利が生じかねない設問を出すのはいかがなものか?

教科書間で有利・不利が発生?
2018年度の一般選抜は,いきなり大問1からちょっとそれはどうよ? と言わざるを得ない設問が出ていました。

(2)③(c)です。この設問は,採択された教科書の違いで若干有利・不利を生じやすい設問だったことを指摘しておかなければなりません。
消費者の権利保護に関する設問ですが,この設問は「消費者の四つの権利」をキーワードとして,アメリカの「ケネディ」大統領を人名で解答するものでした。

しかし,この「消費者の四つの権利」は教科書間で不利気味になるところがあります。
大阪府内では,日本文教出版(日文)・東京書籍(東書)・帝国書院(帝国)・育鵬社(育鵬) ・教育出版(教出)の5社の教科書が採択されています。
次にそれらをまとめます。
  • 日文:教科書124~125ページに記載無し,「消費者主権」注釈の243ページで記載あり
  • 東書:教科書124ページの本文と左の図版中に記載あり
  • 帝国:教科書117ページの本文に記載あり,四つの権利は同じページの右に解説あり
  • 育鵬:教科書130ページの本文に記載あり
  • 教出:教科書122ページ左側にケネディ大統領の写真付きで記載あり
上のまとめのように,日文の教科書では,教科書の本文中に「消費者の四つの権利」に関する記載は全くありません。
「消費者主権」(太字語句)のところに矢印で案内されている243ページの巻末の注釈で確認して場合に注釈の中で記載されているに過ぎません。

巻末注釈まで踏み込んで授業を受けていた人たちは問題無かったかもしれませんが,注釈をスルーされた人たちは,自身で相当細かいところまで踏み込んで勉強した人でない限りは,おそらく解けなかったのではないでしょうか。

ここらへんを加味すると,日文採択地域の受験生は他教科書採択の人たちと比較すれば,この設問に関してはハンデを背負わされたと見なすことができるかもしれませんね。

私からすれば,ケネディを答えさせるのは悪問だと思います。
せめて法律の条文の一部を引用して,「消費者基本法」「独占禁止法」あたりの法律名を答えさせる方が設問としては良かったのではないか? と考えます。

次回は……

次回は大問2について述べていく予定です。

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