【2016年度入試】三重県後期・社会科入試問題分析:その2

23:48:00
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前回に引き続き,三重県立高校入試・後期の社会科の問題を分析していきたいと思います。
今回は,大問3~5と次年度入試に向けてについてのコメントを記します。

大問3について

大問3は,6つのテーマについて調べ学習を行った設定での歴史(奈良~大正時代)の問題です。
基本的には,社会・経済史,文化史,外交史といった問題が見られます。

難度は,標準レベルです。
文章記述問題も鉄板の問題が使われていました。

ただ,今年に選挙権の資格に関する問題を使ったのは,正直言ってもったいないの一言。
2017年度入試に回していれば,今年(2016年)7月の参院選からの選挙権の拡大を絡めて問題として使うことができたわけです。
それを考えると,なんてもったいない使い方をしたのかなあと嘆息せざるを得ません。

大問4について

大問4は,政治史中心の歴史の問題でした。なお,(6)のみ公民の経済分野です。
難度としてはやや難といったところでしょう。

(1)で受験生にとっては意表を突かれて調子を狂わされた人も少なくないかもしれません。
他にも,意表を突く小問としては(3)も同様でしょう。

(1)は,稲荷山古墳の位置を地図上から選ぶという設問です。代表的な遺跡などについては都道府県レベルで場所の確認はしておきたいところです。

(3)は,俵物が何なのかという問いでしたが,これは完全に受験生にとっても予想外の小問だったでしょう。
ちなみに,俵物とは干して作られた海産物のことなのですが,その中でも特に干したナマコ,干した鮑,ふかひれの三品が珍重されました(中華料理の高級食材ですね)。

(5)は,原敬内閣の基盤であった立憲政友会を答えさせる問題です。ここは用語解答問題としてはなるべく落としたくない問題です。ここに関しては「原敬→日本初の本格的な政党内閣,立憲政友会,(平民宰相)」の最低2点が連想できれば良かったでしょう。

大問5について

大問5は,公民の政治・経済・国際分野についての問題でした。
難度は,やや難といったところでしょう。

中でも(3)(a)と(6)(b)が厄介だったと思います。

(3)(a)については,ヨーロッパの国(特に北欧)は高負担高福祉,日本は中負担中福祉,アメリカは低負担低福祉の国であるということを知らないとしんどいでしょう。

例えば,日本では国民健康保険制度などが整備されていますが,アメリカはまだまだですし,個別の保険(これまた結構高い)に入らないといけません。

アメリカは「自由」が強く打ち出されている国なので,医療保険とかは基本的に政府が面倒見る必要がないと考えている人も少なくはないのです(アメリカの破産の理由も医療費が原因ってのも多いですし……)。

北欧の方は,税負担はものすごく高いです。正直な話,日本ですらまだ甘いというレベル。特に,消費税率はEU加盟国であれば,15%~25%だそうで……。

(3)(a)についてちょこっと余談

ここからはオフトピックな話(というよりも,中学レベルをはるかに飛び越えてしまう話)になりますが,政党・政治家・コメンテーターの中には,よく「日本は北欧の福祉を見習え」なんてことを主張する方がおられます。

ですが,北欧を見習うとなるとそれ相応の潤沢な資金(予算)が必要となります。
それに見合うだけの予算確保をとなれば,税負担は相当引き上げなければなりませんし,外貨を得る努力も今まで以上に努力しなければならないでしょう。

例えば,日本とスウェーデンの異なる点として,スウェーデンでは軍需産業で世界中に売り込みをかけているサーブ社という有名な企業があります。
その製品である戦闘機・グリペンは海外への売り込みもかけられ,一部の国ではまとまった機数の採用があるなど,兵器の海外輸出面では結構実績のある国だったりします。

そういう所をわかった上で発言しているのかどうかは微妙ですね。
他にもドイツなんかは,戦車や潜水艦の輸出においては欠かせない国であるなど,その筋では有名な話です(フランスも軍用航空機の生産・輸出では欠かせません)。

(6)(b)について

さて,オフトピックの話題でだいぶ容量を使ってしまいました。
本筋である(6)(b)の方に話を戻していきたいと思います。

(6)(b)は,地球環境問題についての文章記述問題です。地球温暖化と温室効果ガスの作用の図,温室効果ガスの排出量に占める二酸化炭素の割合,発電方法の違いによる二酸化炭素排出量の違いについてまとめた図を見て,自然エネルギーを用いた発電方法の開発に対する期待を説明させる問題でした。

正直言わせてもらえれば,作問側の科学的な知見に足りなさを感じた問題でした。
まず,採点例の方は二酸化炭素を「地球温暖化の原因と考えられる」という形で記していますが,温室効果の寄与率も考えれば,「原因の1つ」という書き方に弱める必要があるはずです(温室効果ガスであるメタンやフロンガス・代替フロンの温室効果は二酸化炭素よりもはるかに高いので,排出量は大したことは無くても寄与率はそこそこ高くなります)。

そういう意味では,温室効果への寄与率(水・オゾンを除くもの)はあっても良かったのではないでしょうか(その方がより正確な解答を書きやすくなるはず……,ただ正答率はガクンと下がるか……)。

資料7は化石燃料を使う発電と自然エネルギーの発電の比較という前提条件がありましたからあの比較でしょうがないですけど,参考として原子力発電を出していればどうなったでしょうね(原子力を外したのは,果たして意図的だったのでしょうかね?)。

他にも,技術的な動きを考えれば,藻類を利用した二酸化炭素を回収して炭化水素を生産する手法も徐々に実用化段階に来つつあるわけですし,そういった科学・技術面の知見も踏まえて問題を作ってほしかったかなあ。

社会科で,この手の問題を作る場合は,環境科学の知見・新技術に関する知見などにチェックが行き届きにくい点はあるかもしれません。
ですが,環境問題関連は異論が出やすい分野ですので,資料選定はなおさら慎重にしないといけないと思いますね。

2017年度入試を見据えて

とまあ,オフトピックな話も交えて2016年度入試を分析してきたのですが,2017年度入試も基本的な出題傾向は変わらないと考えられます(公民だけは新教科書ベースになるので要注意!)。

用語解答には少々癖がありますが,基本的には三重県内で採択されている教科書の共通用語・人名を中心に学習を進めていくことが大切です。

その上で,自分の使っている教科書では太字ではなくても他の教科書で太字になっている用語・人名などもありますので,そういう点にも注意が必要です。

特に,今回の帝国書院の地理のようにおまけ的な書き方をしていても,他の教科書では普通にちゃんと書かれていると言ったところもあります。

近畿圏の他府県の入試でも太字になっていない用語などの記述解答が出題されていますので,ちょっと要注意と言えましょう。
その上で,高得点を狙う場合は,記号選択で失点しないことと,文章記述の定番問題をしっかりとこなしておくことが大切です。

他にも,定番レベルの統計資料や写真資料に慣れ親しんでおくことは大切です。
統計資料の新版は6月~9月あたりにかけて徐々に出揃ってくるはず。

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